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朝焼けに輝く一つの村を赤きエニグマは眺めていた。
「もうすぐ無垢がやってくる…」
赤きエニグマはそう呟き、空を仰ぎ見る。
「果たしてこの試練を乗り越えることが出来るか…。 見物だな」
そう言い、赤きエニグマは村へと行く道を跳躍した。


赤き漆黒の悟り




「わ~た~し~は~い~も~む~し~。 い~も~む~し~ ご~ろごろ~」
呆然としている3人の目の前に不思議な歌声を奏でる芋虫と名乗る者がいる。
それは闇の森独特のがさがさとした地面にごろごろと寝転がるようにしていた。
ここは闇のプレーンのレヒカフ沼。
バルサミコの話のとおりに南西へと歩いてきたが…。
じめじめとした場所に一ヶ所だけしっかりとした地面があり、そこを調べていたら…芋虫が寝そべっていたのだ。
「ヤミノプレーンノ オソロシサヲ カイマミタヨウナ キガスル…」
ぼそりとカフェオレが呟いた刹那、芋虫はこちらを見てきた。
「むむっ! そなた等は!! 魔法学校ウィルオウィプスの生徒ではないか!?」
「確かにそうだけど…もしかして貴方がギュウヒ・オグラさん?」
「そうだ! 私は魔法界のオーソリティ! ギュウヒ・オグラであ~る!」
びしっと真剣な口調で言った刹那、のんびりした口調に早変わりし、また不思議な歌声を奏でながらごろごろし始めた。
「何をしておるか! 一緒に歌わんか!!」
「ひえぇ! 歌いたくないっぴ!」
ぶるぶると震えるピスタチオに対し、「まぁそんなことをしている暇はないんだけどね」と冷静な口調でリクは言った。
「そなた等の思いは分かってお~る! なんてたって私はオーソリティ! 私の勘では、そなた等の担任のマドレーヌ先生とクラスメイト8人は、ここ闇のプレーンに来ておる! そしてなんと、闇の存在がお前たちを狙っておるのだ!」
「それは知ってます。 と、いうことは残りの全員はこっちに来てるんだね」
「ここから沼の外周を伝って北へ行けば、ヴォークスの住むマサラティ村へと出る。 まずはマサラティ村を目指すが良い!」
「ありがとうございます」と、リクはぺこりと頭を下げ、木々が茂る森へとまた入っていった。

そしてレヒカフ沼を抜けて、森の道を歩いていく刹那。
誰かが話している声がする。
それは見覚えがあるドワーフと一人のヴォークス族の女性。
ドワーフは低い声で「お前は魔法を使えるか?」と女性に聞いた。
女性は「魔法が何ですか?」と逆に問いかけている。
ドワーフはふと後ろを振り向いた。
リクは嫌な予感がして、さっと木陰に隠れた。
ピスタチオもカフェオレも同じように隠れる。
(どうして隠れるっぴ!?)
(アレハ ナニカ イヤナカンジガ シマス)
(うん。 光のプレーンで対峙したエニグマ憑きドワーフかもしれない)
それに気が付いていないようで、ドワーフは女性を見つめ「オレの新たな宿主に相応しい魔法の使い手かと聞いている。 質問に答えろ」
「そんな尋ね方をして誰が答えるもんですか」
頑なな女性に対し、舌打ちをつくドワーフ。
刹那、後ろから風のように刃が飛んできてドワーフの背中に命中した。
それと同じように現れた青年…。
(カシス!)
青年―カシスは、横でこそこそ隠れている仲間を見つめながらも、改めてドワーフを見つめ直す。
「借りを返すぜ。 此処でケリをつけさせてもらう」
ドワーフもカシスを睨みつけ、「ちっ。 邪魔が入ったか」と言い、ひゅん と瞬時に消えてしまった。
「また逃げられたか…」
カシスは舌打ちして、目の前の女性を見つめた。
「大丈夫か? 怪我はないか?」
「ええ…ありがとう。 後ろの人たちは貴方のお友達?」
カシスは振り返り、こそこそと出てくる3人を見た。
「カシスが此処に来てたなんて…。 そういえばショコラは?」
「ショコラはさっきのドワーフに連れ去られた。 それを追っているんだが…」
「追っているけど…さっきワープしたからそれで追い詰めたら飛んでいくってことか」
「トイウコトハ サッキノドワーフハ ヤッパリ エニグマツキ ナノデスネ」
「カフェオレの言う通り、奴にはエニグマが融合している。 オレ一人だったら正体を現して、襲い掛かってきた筈だ」
それを想像したのか、カフェオレは油汗をたらりと掻き「イヤナ テンカイニ ナッテキタゼ…」と呟いた。
「で、どうする? 一緒に来る?」
「当たり前だ。 この闇のプレーンは一人だとやばい。 心理的にも肉体的にもかなりきついしな」
それを聞いて、リクはカシスに手を伸ばす。カシスはその手に握手をした。
にこりと微笑む二人の青年に目の前で見ていた女性もにこりと微笑んだ。
「そういえば、先程村の方でも何人か貴方達みたいな人を見かけましたけど、お知り合いですか?」
「ガナッシュタチダナ。 マチガイナイ」
「結構近いところに皆飛ばされたのかな。 それだと間に合ったみたいだね」
「お知り合いなのですね。 それなら彼らを止めたほうが良いかも」
「…? どういうことだっぴ?」
「彼ら、レヒカフ沼の南にあるエニグマの森に行くって言ってましたから…」
ごめんなさい、あまり村の者に見られたくないので と女性は言い、颯爽と立ち去ってしまった。
呆然とする4人。
「エニグマの森って…」
不安気なピスタチオに対し、「まぁ森の名前でエニグマって謳ってるぐらいなら、エニグマが沢山いるエリアなんだろうね」と、冷静にリクは言った。
「とりあえず、マサラティ村に行こうか。 話はそれからだね」
そう言い、4人は再び森の道を歩いていった。


マサラティ村はかなり平凡な、質素な村だ。
さわりさわりと草原のような広場にぱたぱたと行ったり来たりするヴォークス族の子供たち。
「ここはかなり平和だな」
「周囲に沼があったり、南にエニグマの森があったりするのにここまで平穏を保てるんだね」
きょろりとリクは周囲を見渡す。
久しぶりののんびりとした村に4人共リラックスしていた。
「入口の所で聞いた通り、まずはリーダーの所に行こうか」

村長の家へと行くと、そこにはヴォークスの男とヴォークスの青年が何か話している。
「君をこの家に入れるな、とのリーダーのお達しがあるんだ。 帰りなさい」
「でも…シナモンの忘れ物…じゃなくて、シナモンのハンカチが森に落ちてたから…」
「ならば私が預かろう」
「直接…渡したいんです」
「それは出来ない」
「どうして?」
「ルールだ。 どうしてもと言うならリーダーの許可を仰がなければならない。 だが、リーダーはお疲れなのだ。 また明日来なさい」
ヴォークスの男がそういうと、青年はしょんぼりしながらとぼとぼと宿屋のほうへと歩いていった。
それを聞いていた4人。
「シナモンって…さっきの女の人の事かな」
「だとするとさっきの奴は…?」
素朴な疑問をするカシスにリクは微笑む。
「さっきの青年は、もしかするとガールフレンドかもね」
そう言いながらリク達も宿屋へと入っていく。
そこには先程の青年と…もう一人客がいるようだ。
ぎりぎり4人泊まれる場所があり、リクは代表としてカウンターでチェックインをして、そこにいた青年を見つめた。
「君はさっき村長の家の前にいた…。 何だか恥ずかしい所を見られちゃったな」
「恥ずかしくはないと思うな。 寧ろ腹立っても良かったのに」
「まぁそうだね…。 さっきのハンカチを届けるってのは、シナモンが考えた作戦だったんだ。 少しずつ、村の人と馴染めるようにって」
「さっき、罵詈雑言されてたけど…」
「はい…。 僕、村から離れた所で生活をしてまして…」
「一人で生活をしているの?」
「はい…。 僕の両親はもう死んでしまいましたから」
「そっか…。 僕もなんだけどね」
くるりくるりと天井で回るシーリングファンをリクは仰ぎ見る。
「少しずつ、諦めないで村の人と馴染もうと思ってます…。 だから明日また行ってみる」
少しだけ自信が出たのか、青年はぐっ と握り拳をつくった。
刹那。
「よしな、メースちゃん」
カウンターの向こう側から宿屋の亭主が口を挟む。
「あんまり目立ったことをしていると痛い目にあうよ。 メースちゃんの両親が死んだのは村の者の所為さね。 メースちゃんの目を正面から見れる大人は一人もいない」
「どういうこと?」
リクの問いに対し、亭主は親切に話してくれた。
「メースちゃんの両親はウーズ熱という流行り病で死んだんだ。 ウーズ熱はアイスシードさえあれば、簡単に直せる。 沼の真ん中の氷島の洞窟にグラッシュの花があってね、その花がアイスシードを実らせるんだ。 それは村の皆が知っておる。 ただ、誰にもそれを取りに行く度胸がなかったんじゃ。 大昔の言い伝えを引っ張り出してきてやれ『悪魔の熱だ』とか、『呪いの熱』だと騒いで、誰もアイスシードを取りに行こうとはしなかったのさ」
「旅人の前でそんなこと言わないで下さい。 知ってましたよ…。 でも『その事で村人を責めるな』と言うのが父の最期の言葉でした。 自分の為に命を賭けろとは言えないでしょう? 父は笑ってましたよ…」
「…そうなんだ…」
リクは呟いて、自分の両親を思い出す。
幼い頃からずっと迷惑をかけてばかりだった…。
(メースに対して、僕は親不孝者だよなぁ…)
そんなリクの思いとは裏腹に、メースは「村の人に分かってもらう為に大切なのは、言葉ではなく僕が何をするかなんです」と亭主に言った。
「大人になったね…メースちゃん。 ご両親が亡くなったときはあんなに小さかったのにね…。 ごめんね、おじさん何もしてあげられなくて…。 今日は皆タダで泊まっていきな」
そこのお兄さんもね、と亭主はもう一人の客人にも言う。
その客人は焔色の長い髪をリボンで一つに纏め、焔色の瞳でリクを見つめている。否…リクだけを見つめていた。
そしてリクの目の前に来て、「外で待っている」と低音の声で呟き、外へと出て行った。
「…あの人はお知り合いですか?」
「うん…まぁね」とリクは言い、追いかけるようにして外へと歩いていった。

夕焼け色に染まる空を男は見つめている。
そこへリクが歩いてきた。
「来たか。 リク」
「まさかこんな所で会うとは思わなかったよ…アマリア」
アマリア、という名前に男は疑問を感じたのか、眉をひそませる。
「アマランティアって名前、長いからアマリアって言わせて貰うよ」
マイペースなリクに男―アマリアは溜息をついた。
「名まで覚えていないかと思った」
「そんなことないよ。 で、僕に何の用? ここでやりあうつもり?」
「ここではやりあわぬ。 折角、この人間の姿で人里に降りてきたのだからな」
アマリアはそう言うと、「2つ確認したい事がある」と話し始めた。
「1つは、お前の中にいるエニグマは英雄と謳われし存在、裏切者のゲゥグレンドゥ…。 そうだな?」
見つめてくる赤き瞳に対し、リクは嘘をつけないと感じたのか、素直にこくりと頷いた。
「そうか…。 ならば2つ目は、お前とゲゥグレンドゥはいつから一つとなった?」
「一つというのは…『融合』の事でいいんだよね?」
「ああ」
「僕が生まれて数時間後、らしいよ」
「そうか…」
ふむ、とアマリアは考え そしてリクを改めて見つめた。
「気をつけるが良い。 お前たちは狙われている」
「そんなの知ってるよ。 というか、エニグマの君からそんな事言われたくないし」
ならば良いのだがな とアマリアは言うと、宿の中へと入っていった。
何を考えているのか知らないエニグマ。
それは魅力的で、何か…親密に感じたリクであった。


翌日。
リク達は改めて村長の家へと歩いていく刹那。
「どうして会わせてもらえないんですか!? 教えてください!」
メースの必死な声が周辺に響いた。
「それはだな…シナモン様は今、お病気で伏せられておられる故、また後日訪ねられるが良い」
「病気…!? 何の病気なんですか?」
「病名か? それが聞きたいか?」
「はい!」
真剣な目つきのメースに対し、ヴォークスの男はにやりと微笑んだ。
「病名はウーズ熱だ。 お前みたいな奴とコソコソ会っているからこんな事になるんだ」
驚愕の言葉にメースは震えた。
まさか人生で2度も悪魔の熱の病者と…しかも己と近しい存在たちが…。
メースは握り拳を作り「取ってきます…」と呟く。
「なんだってぇ?」
「アイスシード…取ってきます! 待っててください! 必ず戻ります!」
メースはそう言い、船着場へと走っていく。
刹那、リクも船着場へと走っていき、「メース!!」と叫ぶ。
「リクさん…」
「僕も行くよ。 一人ではきついと思うし」
「ですが…」
くるりと後ろを振り向いて、リクは微笑んで「カシス、僕行ってくるから待っててね。 直ぐに戻るから」と言い、船へと乗り込んでしまった。
「リク!!」
カシス達はリクを止めようとしたが、船が動くのが先だった。
それはどんぶらこ、どんぶらこ と動き出し、南西の方向へと波を立てていった。
いつもの自由気ままなリクに対し、止められなかったのがくやしいのか、ずんずんとカシスは村長の家の前にいる男の襟首をつかんだ。
「おい! お前嘘つきやがって! メースを厄介払いできてそんなに嬉しいのか!!」
男は襟首をつかまれている理由が分からないのか、「…え? どういうことですか?」ときょとんとしている。
「…!?」
異様な雰囲気にカシスは襟首を掴むのをやめた。
「メース? あいつは数日前から来てませんよ?」
「!!?」
「ドウイウコト ナノデスカ…!?」
まさか…。こいつは誰かに洗脳されていたのか!?
驚愕な顔をしているカシス。
脳裏にはリクがエニグマに狙われているという、最悪な場面しか浮かばなかった。

******

「かなり奥に来たね…」
リクはそう言うと体を震わせる。
それ程寒い洞窟の中なのだ。
ジェラ風穴は沼と川の間にある氷結地帯で、あまりの寒さでここまで来る者はいない。
「多分ここら辺に咲いていると思うんです…。 でなければ…」
そうでなければ大切なシナモンは力尽き、死んでしまうだろう。
メースはそう思いながら前を向いて「行きましょう、リクさん」と言った。
刹那。何か重いもので頭を打たれてメースはどさりと倒れた。
「メース!」
リクはメースの肩を持つのも束の間。
何か鈍器な物で頭を打たれたのか、気を失ってしまった。
リクの耳に残ったものは、聞いたことがある黒い笑い声しかなかった。


ざざん、とも波打たない川を、カシスとカフェオレとピスタチオは呆然と見ていた。
リクを追いかけようにも追いかけれない。その想いが一つだけだ。
結局ヴォークスの番人をしていた男はこの数日間、何も覚えていなかった。
ということは、いつの間にか誰かにコントロールされていた、としか考えられない。
(リクは闇属性。闇属性の者なら闇属性であるエニグマに狙われてもおかしくはないしな…。それよりも)
「これからどうするか…」
「追いかけれないっぴ! 追いかけたいのに…」
「コノ クヤシサ…。 イヤイヤデスネェ…」
「そうなんだけどな…」と、カシス達が困り果てている刹那。
後ろから何か黒く重い気配を感じた。
カシスはばっと後ろを振り向き、身を強張らせる。
「あまり固くなるな。 俺は何もしない」
そういった男は赤い髪を赤いリボンで纏め、焔色の燃えるような瞳をしている。服も赤く、全身赤尽くめだ。
それだけでカフェオレは頭の中にあるシルエットが、あるエニグマと一致した。
「マ…マサカ アマランティア!?」
名前を告げられ、アマリアは溜息をつく。
「ひええ! エニグマっぴー!」
ピスタチオの強烈な叫びに、アマリアは「あまり叫ぶな、ヴォークス族。 俺は何もしないと言っただろう。 久しぶりに人里に降りてきたのだからな」と冷静に言う。
「それで、リクは何処に行った」
赤く燃える瞳に魅了されたのか、カシスは偽ることなく素直に「それが…」とアマリアに話し始めた。

一応の事情を聞いたアマリアは「そうか…」と呟いた。
「もしかしてお前がその男を洗脳していたんじゃないかと思ったが…リクの居所を聞くということは」
「知らぬ存ぜぬ、だな」
だが…、とアマリアは冷静に話を続ける。
「恐らくはハスネル系…。 敵を洗脳したりすることができる能力が長けている一族の仕業だろう」
「クアトロ…ファルマッジか!」
「あのワープも使うエニグマっぴか!?」
慌てふためいているピスタチオに対し、アマリアは「行くなら俺が連れて行こう。 一応はワープは得意分野だからな」と冷静に言った。
「まさかエニグマに助けられるとは思わなかったが…」
様々な思惑があるかもしれないエニグマに対し、カシスはこくりと頷いた。
「ああ、連れて行ってくれ」
「ホンキデスカ!?」
「え…エニグマっぴよ!?」
「俺だって不安だ。 だがな、ここで躊躇していたら仕舞いな様な気がする」
「ワ…ワカリマシタ」
「不安沢山だけど行くっぴ!」
「ならば、俺の手を掴め」
アマリアはそう言うと、手を差し出した。
その手を3人はぎゅっと握り締めた刹那、一気に風景が変わる。
さらには先程まで温暖だった所から、冬のような寒い所に着いたからか、一気に体温が奪われる。
「さ…寒っ…」
「オ…オレ サムイノ…ニガテ…」
2名がその寒さに固まるが、1名だけピンピンしている姿がある。
「オイラ平気っぴ! 何だか分からないけどぴんぴんしてるっぴ!」
「なんでお前だけ…」
「元々、ヴォークス族は冬の寒さに長けた種族だからな。 ここの環境にすぐに適応できたのだろう」
アマリアはそう言うと、奥の通路を睨みつけるように見つめた。
「向こうの奥か…。 リク達がいるのは」
「恐らく、な」
「よし…行こう」
そう言いながら、カシス達は体を冷やされながら奥へと歩いていく。
刹那、奥から何かの悲鳴が聞こえた。
「…! リク!」

気を失いながらも、それの侵入を拒む身体の悲鳴なのか、リクは悲鳴をあげる。
クアトロフォルマッジは先程から心臓の部位に頭を突っ込み、融合を果たそうとするが…。
「何故だ! 何故融合が出来ぬ!」
少年という無垢な年齢、体つき、闇属性…。どれをとっても魅力的で融合しやすそうなのだが、どうしても無理なのだ。
「どういうことだ! 何故だ! 俺の何がいけない! 何故拒むのだ!」
「リク!」
融合適合者の名前を呼びながら2人と1匹はクアトロフォルマッジのところに走ってくる。
「クアトロフォルマッジ! ここで何をしている!」
「赤き賢者、アマランティアか…。 何をしているかなぞ、お前には分かる筈。 我々は融合するのだよ」
「知れることだ! 何故裏切る、クアトロフォルマッジ」
「裏切る…? それはそのままそっくり返してやろう」
「…何だと?」
クアトロフォルマッジはにやりと微笑み、アマリアの動揺している姿を見つめる。
「元々、お前の主人であったゲゥグレンドゥは俺達を裏切った。 それでもお前は奴を裏切ることなく、そのまま待っていた」
「だからなんだ」
「そして数年前に融合しかけている奴を助けて、融合もせずに物質プレーンに届けやがった。 何事にも耐え難いエニグマとしては最低な行為だ! 俺達は融合を目的として【主】に造られし存在だ。 俺達はただ融合だけを望めば良いんだよ!」
「それではならぬ。 俺はグレン様に悟られた。 『生きとし生ける者は全て野生の獣のように真っ直ぐであることはいけない。 必要なのは唯一つ。 人間とどう共存するか。 そのための方法として融合というものがある』と」
アマリアはクアトロフォルマッジの前に出る。
「我らはエニグマだ。 暗き闇に潜む獣。 だが、何も考えなしに融合するということは、結局はただの獣と同じということになってしまう。 それではならぬのだ」
「五月蝿い! お前もここで八つ裂きにしてやる!」
「やれるものならな」
アマリアは攻撃態勢に入る。
刹那、カシスは剣の精霊を呼び出し、魔法を発動させて攻撃した。
「ぐっ…」
「おいおい、俺達の事を忘れてないか?」
にやりと微笑むカシスを前に、クアトロフォルマッジは「くそ…覚えていろ!」とワープをしてしまった。
「あっ…。 ま、いいか。 それよりも、リクは…」
そう言い、カシスは奥にある結晶体の祭壇のような所に上向きに倒れているリクとメースを見つけた。
すぐさま近くに行き、二人の顔の頬を交互に叩く。
「おい! リク! メース! しっかりしろ!」
カシスの手の暖かみのお陰だったのか、リクは少しずつ目を開いていく。
「ん…。 カシス…?」
「大丈夫か? 身体に何か変化がないか?」
「身体…? うん、なんともないけど…どうしてここに来たの?」
「お前がクアトロフォルマッジに融合されそうになっていたからさ。 こいつにお願いして、な」
カシスは後ろを振り向く。
そこにはピスタチオとカフェオレの姿と同じく、一匹のエニグマの姿があった。
「アマリア…。 君が助けてくれたの?」
リクがそう言うと、アマリアは恥ずかしいのか、出口の方向へ向いた。
「帰りはお前たちでも平気だろう。 しばし別れだ、リク。 『楽園』で待っているぞ」
アマリアはそういうと、ワープの魔法を発動させたのか、姿を一瞬で消した。
呆然とする4人。
それを打ち消したのはいつの間にか目を覚ましていたメースだった。
「凄い!! これだけアイスシードがあれば…!」
そういうと呆然としている4人を尻目に、駆け足で去っていくメースだった。
「お…おい! 俺達は―」
「まぁ、ゆっくり僕達もワープすれば良いと思うよ」
慌てふためいている親友カシスを無視して、リクは魔法の地図を手にしたのであった。

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